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【原神-書籍】モンドタワー 第1巻

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遥か昔の貴族の時代、モンドの広場には高い塔が立っていた。名目上は風神バルバトスを祀るため建てられたもの。だが実際は、貴族たちが自らの権力を誇示する象徴であった。あの暗黒時代、平民は貴族に搾取され続け、喜びを享受できたのはバドルドー祭の限られたひと時だけ。

ある年のバドルドー祭で、高い塔の上に異国の美しい少女が立った。彼女の名前はイネス、遠方の遊牧民であり流浪の歌手であった。またたく間に、貴族も奴隷も、老人も子供も、広場にいたすべての人が彼女の美しさに惹かれた。彼女がバドルドーを投げる姿を誰もが見たかった、異国の少女の歌声を聞きたかった。

「バルバトスの祝福はみんなのものです、こんな日に悲しい顔をするのは罪です!」

そう歌い続け、イネスは祭りで得た収入を町の貧者と孤児に配った。

人の群れに紛れ込んでいた、1人の瘦せ細った男。彼は当時の大主教、そして彼はイネスに一目惚れをした。だが神に貫いた信念が故、自身の抑えられぬ感情を恥ずべきものと思った。その上、イネスの身勝手な行動と、教会にしか許されぬ貧民への施しに怒りを覚えた。

周知の通り、モンドの信仰は風神が唱えた「自分の愛を探し、自由になろう」だ。だが風神が眠っていたあの暗黒時代、貴族の圧迫統治と平民の貧困問題、魔龍の暴虐がもららす災厄があった。

「正統」を自称する傀儡の教会が、魔神から天罰を下されないよう禁欲を唱え、「聖潔」と認められた歌以外を風の象徴であるライアーで演奏することを禁じた。

「これ以上、あの子にここに居てもらっては、みんなが彼女に惑わされてしまう。こいつはいったい何の魔女なんだ?」と大主教は考えた。

そして、大司教はある計画を密かに企てた、イネスを教会に監禁し審判を受けさせるという計画を。だが、貴族の時代にはある慣習があった。バドルドーを投げる少女に選ばれた女性は祭りが終わった後、貴族の宮殿で三日間働くことになるのだ。

この三日間の間に、女性の貴族の保護を受けるという。仕方なく、大主教は自分の養子であるオクダヴィを宮殿に潜入させ、イネスを誘拐することにした。

オクダヴィは人々に望まれない子供であった。生まれたばかりの彼は産みの親に捨てられ、大主教が彼を引き取り育てた。昔、幼かった彼は龍災を招いた不吉の兆しと思われ、暴力と排斥を受けてきた。

彼を守ってくれたのは大主教だけ。オクダヴィは世間の辛さを味わったのだ。そんな彼にとって、大主教は父のような存在。だから、彼はほぼ無条件に大主教を信じていた。

「誰にもバレないよう、バドルドーを投げた少女を連れてきてほしい。もちろん僕の名前を出さないように」

大主教の命令により、心が純粋なオクダヴィは夜闇に乗じ、宮殿客室のバルコニーに侵入した。しかし、月光の下で少女は泣いていた。その予想外の姿にオクダヴィの心はさざ波が立つ、バルコニーから唖然と少女を見つめ、心を奪われた彼は自分の任務を忘れてしまうのであった。

貴族の従者の大きな声が、彼と少女の無垢なる沈黙を破るまで……